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奈良地方裁判所 平成7年(わ)83号 判決 1995年6月27日

本籍

佐賀県東松浦郡呼子町大字小川島二〇九番地

住居

奈良県天理市新泉町二九四番地

型枠工事業

前田正

昭和二一年一二月五日生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官水沼祐治出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一年二月及び罰金二〇〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、奈良県天理市新泉町二九四番地に居住し、同市新泉町四三四番地において、「前田工務店」の名称で型枠工事業等を営むものであるが、自己の所得税を免れようと企て、

第一(公訴事実第一)

平成二年分の総所得金額が一億二二四九万一〇一二円で、これに対する所得税額が五六三二万五〇〇円であったにもかかわらず、実際の所得金額に関係なく、殊更過少な所得金額を記載した所得税確定申告書を作成するなどの行為により、その所得金額のうち九三四九万一〇一二円を秘匿した上、平成三年三月七日、奈良市登大路町八一番地奈良合同庁舎内の所轄奈良税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が二九〇〇万円で、これに対する所得税額が九五七万五〇〇〇円である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、平成二年分の正規の所得税額五六三二万五〇〇円との差額四六七四万五五〇〇円を免れ、

第二(公訴事実第二)

平成三年分の総所得金額が七六六二万八一九三円で、これに対する所得税額が三三三七万二五〇〇円であったにもかかわらず、前同様の行為により、その所得金額のうち四一〇二万八一九三円を秘匿した上、平成四年三月四日、前記奈良税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が三五六〇万円で、これに対する所得税額が一二八五万八五〇〇円である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、平成三年分の正規の所得税額三三三七万二五〇〇円との差額二〇五一万四〇〇〇円を免れ、

第三(公訴事実第三)

平成四年分の総所得金額が三八四四万二一〇五円で、これに対する所得税額が一四二二万一五〇〇円であったにもかかわらず、前同様の行為により、その所得金額のうち一六八四万二一〇五円を秘匿した上、平成五年三月五日、前記奈良税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が二一六〇万円で、これに対する所得税額が五八六万四〇〇円である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、平成四年分の正規の所得税額一四二二万一五〇〇円との差額八三六万一一〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

被告人の当公判廷における供述のほか、判示各事実(これに対応した各公訴事実)につき、検察官請求に係る証拠等関係カード記載の公訴事実の別に従い、同記載番号1ないし66、69ないし90のとおりであるから、これを引用する。

(法令の適用)

(刑法については、平成七年法律第九一号による改正前を適用する)

一  該当法条 所得税法二三八条一項(懲役と罰金を併科し、情状により、罰金については同条二項を適用する)

一  併合罪の処理

1  懲役刑につき 刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情の最も重い判示第一の罪の刑に法定の加重をする)

2  罰金刑につき 刑法四五条前段、四八条二項

一  労役場留置 刑法一八条

一  刑の執行猶予(懲役刑につき)

刑法二五条一項

一  訴訟費用の処理 刑訴法一八一条一項ただし書

(量刑の理由)

被告人は、平成二年分から同四年分の各確定申告に際し、収支決算をせず、適宜過少な所得金額を計上して所得を秘匿したものであるが、そのほ脱税額は合計七五六二万六〇〇円と高額であり、通算ほ脱率は七二パーセント強となっている。このように被告人がいわゆるつまみ申告をしたのは、建設業界は景気の変動が激しいので、景気が悪い時に備えて資金を確保するためであったというのである。こうした犯行の罪質、動機、規模等にかんがみると、犯情はよろしくないが、被告人が事実を認めて反省の態度を示している上、本件について修正申告をして本税を納付済みであり、重加算税等についても早期に納付したいとの意向を示していることや、本件後会計士の指導の下に適性な納税をしていることなどをも総合勘案した。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 鈴木正義)

様式 第146号

<省略>

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